旨い酒ってなんだろう?
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日常の中の特別な時間をつくる。人生を愉しくする酒器を目指して:陶芸家 石川隆児さんと酒器座談
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日常の中の特別な時間をつくる。人生を愉しくする酒器を目指して:陶芸家 石川隆児さんと酒器座談

旨い酒ってなんだろう?

陶芸家 石川隆児さんの銀彩酒器と、きょうの日本酒をセットにした商品の販売を開始しました( → 石川隆児さんの、きょうのうつわ)。

そこで、より石川さんの酒器を愉しんでいただくべく、うつわ作りへのこだわりや銀彩酒器についてなど、様々なお話を伺いまとめました。ぜひ日本酒を呑みながら、読んでいただけると嬉しいです。

銀彩酒器について

石川隆児さんより:

銀彩酒器はすごくシンプルな形です。丸い形が手に馴染みやすく可愛いらしい。

口の作りは薄く仕上げ、上唇のあたりが心地よくなるように、飲み口の内側の曲面を仕上げたり。色んなうつわを使っていく中で感じた心地よさや、手取り感、重さも含めてこだわっています。

内側に銀が入ることでキリっと引き締まり、場が華やいだり、お酒の場にふさわしい感じを。スタンダードな形に特別な銀をのせることで少しでも魅力が伝わればいいなと。

銀彩酒器ときょうの日本酒で、ふとした日常の中の特別な時間を愉しんでもらえたら嬉しいです。

この記事のハイライト

🍶 使われることで価値がでる

🍶 酒器は愛でるもの。そうなればいいなという理想が造形に宿る

🍶 時間と共にうつろう銀彩と、どう付き合うか

🍶 酒器との出会いと使い育てる時間を、二段階で愉しんで欲しい

道具として愛される、うつわづくり

奈雲(きょうの日本酒):
今日はありがとうございます。 まずは石川さんについてご紹介いただけますか?

 

石川(石川隆児氏):
東京の国分寺市を拠点にして8年くらい活動中です。 イベントに出たり、スペースやギャラリーを借りて販売をしています。 最初のきっかけは高校3年くらいにうつわ作りに興味が出て、大学に入って粘土や陶芸に触れてそこからのめりこんでいきました。

でも作家を目指しているという感じではなくて。陶芸で食べていくには自分でうつわを作って、販売して、お金を頂いて食べていく。それが作家活動と言われているだけであって、僕自身はあまり作家を目指すという感じではないです。

 

奈雲:
作家を目指すのではなくうつわを作りたいと思ったのはどんなことから?

 

石川:
自分のためにというより喜んでくれる人、使ってくれる人がいるから。うつわは道具なので作れるかなと。

道具性と作品性の対比がある気がしていて、作品はアート性が強いものだと思います。それだけで突破できる、空気を変えられるというか。

道具は人が使ってくれることによって価値がでます。使われる用途が前提にあるものなので、人とのコミュニケーションをとる時にうつわが繋げてくれる。皆さんと繋がったのは、うつわを作っていたからだと思うので。 これは自分がうつわを作る意味だと感じています。

 

奈雲:
道具の話は、以前も別の場でお伺いしたことがありましたね。

 

石川:
道具に対する憧れがあるんですよ。 作品は作者の名前が立つけれど、道具は誰が作ったかわからなくても心地よく使われているものが沢山ある気がしています。 フィクションではなく、使っていて愉しいとか身体的な感覚があるかなと。

いずれ僕の名前が消えてその人のものになったらいいなと思っています。 

日本酒の相棒になる酒器

奈雲:
今回は酒器を作っていただきましたが、家で日本酒を飲まれること、愉しむことってありますか。

 

石川:
普段はあまり飲まず、人と会う時に飲みますね。お酒の味わいや時間を愉しむためにお酒を飲む行為が重要だと考えています。

お酒によっても情緒があって、飲むときのマインドが違うというか。 日本酒は一番丁寧に、ちょっと背筋が伸びる感じがあるので、適当にはあまり飲めないですね。

今回の企画のように、味の飲み比べをこだわりのうつわで飲むという提案はすごく共感しますね。日本酒で僕がやりたいことだったので。年取った時に日本酒を1人で飲んでるような大人になりたいですね。

 

奈雲:
確かに日本酒に対する緊張感というか、特別感って日本人だと特にあると思います。

 

石川: 日本文化に対する敬意のような、お百姓さんが育てたお米みたいなことを言われて育ったのもあると思います。日本酒もお米からできていますし、お酒は神に捧げられるものでもある。

陶芸も火の神様にお神酒を捧げたりするため、自然と背筋が伸びるのかなと思いますね。

古いうつわなどを購入したとき、このうつわを使ってお酒を飲みたいと思ったりもしますが、うつわを使いたいから中身を準備するのは理想的だなと感じますね。

そこに人がいたら楽しいし、自分のための時間としてもいいなと。 お酒とかうつわとかその空間とか、時間と対話する的なニュアンスになるし、そういった時間を愉しむときに、酒器が相棒的な良さがあると思います。 

ケの中のハレ

奈雲:
石川さんは自分の心を潤したい時、整えたいなという時にやっていることなどはありますか?

 

石川:
日常の中に特別な時間を作るのは難しい気もしますが、東京を離れてみるのが早いのかなと。 旅をするのがいい刺激になっているんですが、頂く食事や過ごす時間、見る景色がいい影響をくれています。

 

奈雲:
石川さんのinstagramストーリーからも、普段伝わってきますよね。

 

石川:
ありがとうございます。でも、やっぱり自分が目指す暮らしの中の景色としては、日常の中にある非日常的な景色で、特別なことをしに特別な場所に行くのではなく、普段の場所から特別な気配や空気を得られたら人生愉しくなるだろうなと思っていて。

ケの中のハレという言葉が好きなんです。 日常の中の特別な時間、特別なお菓子をうつわに盛りつけてゆっくり愉しんでいただく。 僕のうつわときょうの日本酒でそういう景色は十分作れるだろうなと。そういうふとした日常の中の特別な時間を作れた時、ものすごく喜びを感じます。

うつわを通常の使い方と違う使い方で見立てる、みたいな話も面白くて。僕のグイノミを買って行って、おつまみの豆鉢みたいに使ってくれている方がいて、一般的な使い方と違う使い方をしてくれると面白いです。

使い手が独自の使いこなしをしてくれる。自分がしっくりくる使い方をしてほしいですね。 色んな種類のうつわを買い集めて素材感やサイズ感できょうの日本酒を愉しんでほしいです。 

奈雲:
冒頭お話した中の、「道具性」にも繋がるところだと思いますが、作るとき心掛けてることなどありますか?

 

石川:
使ってもらいたいというのが前提にあります。 実用性と作品性のバランスがすごく重要だと思っています。

最初に惹き付けるのは作品性、でも実際に手に取って使っていくと使い続けられるうつわと続けられないうつわがある気がしています。使用頻度が高くなるにつれて道具としての役割が強くなっていく。そういうのが理想なんです。

奇抜さや面白さだけだと中身が詰まっていない可能性があって、そこを自分でも注意深くバランスを見極めています。盛り付けて愉しい、写真を撮って愉しくなってくれるといいなと思います。

 

奈雲:
どちらかだけではダメなんですね。

 

石川:
僕はどちらかだけというのが得意ではなく、バランスを取りながらやるタイプです。 作家さんによっては作品性で突き抜けられる方もいるし、 使い辛くてもその作品性に魅力を感じる。 僕のうつわはもうちょっと使いやすさを愉しんでもらえるんです。

ただ、僕のうつわは縁が薄かったりするので、どうしてもかけやすいようなところもあるんですが、そこを丁寧に扱うという、人の気持ちを無意識的に動かすところを期待していますね。

 

奈雲:
そうですね、使いやすければいいだけではなくて、ちょっと緊張感持って使いたい気分の時とか、すごくあります。パパっと簡単なごはんの時ではなく、きちんと丁寧に何か作った時。そんな時に石川さんのうつわを実際に使ったりしています。

 

石川:
やっぱりそのテンションが現れてるという感じなんでしょうか。ありがたいな。

自分では客観視しても見えない部分が、お客さんのinstagramの中にあるような気がしていて。皆さんの写真を見ていると愉しそうなところが伝わってくる。 自分のうつわがそれを引き出せているのを見たときに、自分のうつわが仕事できているなと思えます。

 

酒器は愛でるもの

奈雲:
今回作っていただいた銀彩について、 こだわりだったり、何を着目して作っていったのか、具体的に教えていただけますか。

 

石川:
まず形について、すごくシンプルな形です。酒器っていろんな形があるけど、丸い形が手に馴染みやすく可愛いらしい。
その内側に銀が入ることでキリっと引き締まる感じだったり場が華やいだり、お酒の場にふさわしい感じを。
スタンダードな形に特別な銀をのせることで少しでも魅力が伝わればいいなと思っています。

細かいところでいうと、口の作りは薄く仕上げたり、上唇のあたりが心地よくなるように、飲み口の内側の曲面を仕上げたりとか。
自分が色んなうつわを使っていく中で感じた心地よさや、手取り感、重さも含めてですね。

 

奈雲:
ちょっと重めですよね。

 

石川:
下に少し重心を残しています。 お酒が好きで骨董好きの方とかから聞いた話ですけど、やっぱり酒器はある程度重みがあった方が楽しいよね、と。

ずっと掌の中に持っていたい、そのぐらい愛着の沸くものが理想的なのかなと思って。テーブルに置かない、手放さないみたいな。

酒器は愛でるもの。そうなればいいなという理想が造形に入っていると思います。 

美味しいって時間が生まれる

奈雲:
酒器って特殊ですよね。あんなに口をつけて使うものって、うつわでもなかなかないです。使い手としても味わいが変わる。

 

石川:
うつわによって味わいが変わる、で言うと、日本酒の話ではないんですが、最近抹茶カフェに行って紙コップで提供されたんです。 逆に新鮮で面白いと思ったんですが、普段飲んでいる抹茶の味と一緒なんです。でも紙コップで飲むとその先がないんですよ。

普段茶碗で飲んでいると掌でお椀を包んで、熱が掌に伝わって、両手で抱えて飲んで。みたいな感じが全部愉しいんですけど、紙コップだとただの飲料になってしまったんだなと思って。

美味しいの解釈に話が広がるんですが、 僕たちは何かを美味しいと思っている時に、単なる味覚って話だけではなくて、気持ちの状態というか、その気持ちを誘発する道具、空間、景色、そばにいる人、トータルでポジティブな気持ちになった時に、美味しいって時間が生まれるのかなと。

やっぱり日本酒を美味しいと味わう時、酒器はすごく重要だと思っています。

手作りのうつわとの付き合い方

奈雲:
石川さんはよく、酒器とかうつわとかがその人によって育てられて、その人のうつわになっていくみたいな話をされていますよね 。
特に銀彩って、変化があるものだと思うんですが、その変化の愉しみ方とか、付き合い方とか、思われることってありますか。

 

石川:
銀彩のうつわはぱっと見、扱いづらい雰囲気もあるかもしれないけど、銀特有の色の経年の変化をそのまま愉しんでいただいてもいいですし、磨いて手入れをしていただいてもいい。
こうしなきゃいけないというのはないですね。うつわとのつきあいが皆さんのなかで始まると思います。

経年変化みたいな言葉が身近にあると、長く生きていく中で時間を味方にできるというか。美しく保ってもいいですし、欠けてしまったり、シミがついてもそれも含めて経年変化なので。

そういうものを愉しめるようになると、手作りのうつわとの付き合い方が上手くなるような気がしています。

銀彩は時間を感じられるうつわなのかなと、そのあたりも含めて愉しんでもらいたいですね。

 

奈雲:
僕、どっちもやっています。1つは銀を綺麗に保って、もう1つは意図的に変化するようにしていて、全然違うものになっているので、面白いですね。
綺麗に保つ方法も、検索してみると色々あるんですよね。

 

石川:
まさに今おっしゃったとおり、検索すれば答えが出てくるんです。 答えを提示されてその通りやるのか。一歩立ち止まって、この銀彩をどうしたいのか自分と向き合うくらいの、そういった取り組みも小さなことだけど好きなんですよね。

本当にそのくらい愛着を持って関わってくれるようなうつわを目指したいです。

僕の土は、きめが細かく多少ゆがみが出やすい性質なんですけど、焼いたときにも土が窯の中で柔らかくなる瞬間があって、そんな時に歪みがまた生じるものもあります。 粘土の性質であり、焼きも影響していて、全部が同じでなくちょっと個性的なものがいたり。

自然と歪んだものってなんか可愛いですよね、サプライズみたいな。最後窯に入れる焼き物の面白さが好きですね。造形にも影響してくる、それが自然な形であることが心地いいです。

よく言う言葉ですけど、1つも同じものがない世界なので、届いたものがあなたのうつわですよ、みたいな。

 

奈雲:
だから、ぱっと見ると端正な空気を纏っているんですけど、よく見ると微妙に柔らかさもあって、そこが愛着があっていいですよね。

 

石川:
柔らかいっていう言葉が出ましたけど、焼き物って物質的には硬いものじゃないですか。
でもいろんな陶芸家の方とか、今までお会いした古道具屋さんとか、目利き的な人たちは、柔らかいうつわとか、優しいうつわとか、可愛いうつわっていいよな、みたいなことを言うんです。

格好いい、重厚感があるとかそういう重たい話じゃなくて、軽やかな言葉というか。あとは色気があるのはいいよなとか。
そういう言葉を皆さん使っていて、僕もどこかでそういう雰囲気をイメージして取り組んでいるので、まさにそう言っていただけて嬉しいなと思いました。

 

奈雲:
届いた瞬間にその1個がその人のオリジナルだし、使えば使うほどさらにそれが育って、愉しめるんですね。

 

石川: ですね。出会いと時間、二段階に愉しめます。

石川隆児さんの、きょうのうつわ

日本酒を愉しむ時間を嗜みに。そんな魅力が酒器にはあります。石川さんの銀彩お猪口ときょうの日本酒のセット。数量限定で販売中です。

詳しくはこちらをご覧ください。
石川隆児さんの、きょうのうつわ 

 

石川隆児さんのインスタグラムはこちら

https://www.instagram.com/iskwryuji/

本記事は 後編 に続きます。