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【酒蔵訪問記】中島醸造(小左衛門 醸造元)
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【酒蔵訪問記】中島醸造(小左衛門 醸造元)

2025年2月8日、岐阜県瑞浪市の中島醸造さんにお伺いしました。

中島醸造さんは、「小左衛門」(こざえもん)という銘柄で知られる酒蔵です。
この度、きょうの日本酒で、この小左衛門をお取り扱いさせていただくことになりました。

きょうの日本酒では、お取り扱いさせていただく酒蔵にはすべて足を運んでいます。

お酒が造られる空間に実際に訪れることで、話す、見るだけでなく、蔵の匂いや音、これまで積み重ねてきた時間、造り手の息遣いや仕事ぶりを、五感で体感することができます。

このような身体性を伴う経験を、私たちは一合瓶に詰め込み、お伝えしたいと思っています。

雪の、中島醸造

2/8は東海地方でも大雪の予報。朝から東海道新幹線は遅延し、東京駅も大混雑でした。

名古屋駅から瑞浪駅へは、電車で50分、乗り換えは不要です。

瑞浪駅に車で出迎えてくださった中島さんとともに、車で酒蔵へ。

文化がもっとも華やいだ、江戸・元禄十五年(1702年)に酒造りを始め、瑞浪市にて300年以上続く造り酒屋です。
老舗の風貌をまとった門構え。中に入ると、余白の大きく取られた庭に、シンボルのような大木がありました。

瑞浪という街 - 米どころ、美濃焼、化石、昆虫食

醸造設備などの見学の前に、まずは机を囲んで、瑞浪の街や文化、中島醸造さんの酒造りの考え方や取り組みなどについて、ゆっくりとお話を伺うことができました。

瑞浪市は、米の生産が盛んな農業の街。市民全員が食べるお米の277年分を、1年で生産するそうです。私たちも知らず知らずのうちに、瑞浪のお米をいただいているかもしれません。

瑞浪は岐阜県の南東部、美濃地方に位置し、美濃焼の名の通り、陶磁器の名産地です。ここは、太古の昔は海だったそうで、それが湖になり、粘土が溜まり、陶磁器の良質な原料となったのです。

また、このあたりは少し掘れば、貝の化石がごろごろ出てくるそうで、それが適度にミネラルを含んだ水を供給します。この中軟水で造るお酒は、丸みのあるふくよかな味わいになり、熟成に向いた酒質になるとのこと。

瑞浪を代表する食文化としては、ジビエ、山菜がありますが、実は蜂を食べる文化がいまでも受け継がれているそうです。
例えば、ホウバ寿司というホウバで包む寿司には、ヘボ(蜂の幼虫)を一緒に包みます。時期になると、ごく普通に蜂の幼虫や成虫が手に入るそうです。

米の集め方から変える

小左衛門さんでは、原料米の25%を、地元の瑞浪市内産を用いています。

「気の合う方に造っていただいた米がいい」という中島さん。

2002年に、お米の集め方から変えました。当時は農家さんから直にお米を買うことは仕組み上難しかったとのことですが、中島さんは農家さんを独自に説得、開拓を行っていったそうです。

農家さん向けに日本酒造りに関する勉強会を開催し、こういう米が欲しいんだ、と丁寧に対話をしながら、米造りから携わられています。


米を活かすために。等外米でのお酒造り

米を造っていれば、どうしても一定割合できてしまう「等外米」。
農協に売れないので、農家さんは「クズ米」といって捨ててしまうお米ですが、中島さんは「米を生かす」ために、等外米での日本酒造りに挑戦されています。

それが、「小左衛門 お米の力 ひだほまれ」。

等外米は、米の大きさも成熟度もバラバラ(写真左側)。
毎年、米と対峙しながら、微調整して造るそうです。だからこそ、毎年違う味。むしろそれを一つの良さとして造られています。

実はこのお酒が、今後きょうの日本酒で販売させていただくお酒です。
瓶詰めはまもなく。果たして今年はどんなお酒になるのか。私たちも非常に愉しみです。

時間の多層を感じる蔵

中島醸造の敷地はとても広く、これまで私が訪問した酒蔵の中では最大規模ではないかと思います。
古い建物がたくさんありますが、300年の歴史の中で、時代ごとに建て替えや改修を経て、いろんな時間の流れが交錯している印象です。

最も新しいのは、醸造設備。7年前に冷蔵設備に変更。それまでは半屋外で醸造されていたそうです。

「冷蔵設備にすると、衛生管理はできますが、感覚的に少しさみしい気持ちもあります。思った通りにコントロールできるので安定的に商品を作ることができますが、それだけだと酒と対峙しながら試行錯誤する時間が減ってしまうばかりで想いが伴わない。現代の技術は確かに素晴らしいですが、より一層醪、お酒と向き合う事への意識が高まっています。」

昔を思い出しながらそう語る姿をみて、酒造りに真剣に向き合う中島さんの思いを感じました。

田んぼ見学

最後に田んぼ見学へ。標高や土壌による出来上がる米の違い、酒の違いを教えていただきました

うっすら雪が被った田んぼは、神聖な雰囲気に。素敵な時間でした。

小左衛門の入荷をお愉しみに

「日本の伝統産業の一端として、その道や精神を引き継ぎ、継承しなくてはいけないという想いが根底にあるため、売る事より造る事が重要だと考えております。」という中島さん。

お酒の販売者である私たちは、そういった作り手の想いの込もった日本酒を届けていくことに努力を惜しまず向き合っていく必要があります。

新銘柄「小左衛門 お米の力 ひだほまれ」は、4月頃に瓶詰めの予定です。

お届けまでもう少し。ぜひ愉しみにお待ちいただけたら幸いです。